BLANCPAIN

BLANCPAIN ロゴ

1735年に創業し、現存する世界最古の時計ブランドとして知られるブランパン(BLANCPAIN)。一般的なネット記事では「フィフティ ファゾムスというダイバーズウォッチの元祖を作った老舗」「シンプルでクラシカルなヴィルレが美しい」といった、優等生的で上品な評価が並びます。

しかし、時計の歴史とエンジニアリングの深層を紐解くと、このブランドの真の姿は、「クォーツ時計を親の仇のように否定し、機械式時計の限界突破にすべてを懸けた狂信的なマニュファクチュール」であり、「実用性と美観のためなら、時計の構造自体を変態的なまでにいじり倒す執念の塊」であることが浮かび上がってきます。

今回は、優雅な顔立ちの裏に隠された、ブランパンの知られざる「マッド・エンジニアリング」と意地についてご紹介します。

■ 「クォーツは絶対に作らない」。死の淵から蘇った怪物「1735」

1970年代、日本のクォーツ時計の台頭によりスイス時計界が壊滅的な打撃を受けた「クォーツショック」。ブランパンも一度は休眠状態に追い込まれました。

しかし1983年、ジャン=クロード・ビバーらの手によって復興を果たした際、彼らは「過去にも未来にも機械式腕時計しか作らない」という狂気的な宣言を掲げます。そして、機械式の意地を見せつけるために、復興からわずか数年の間に「ウルトラスリム」「コンプリートカレンダー」「パーペチュアルカレンダー」「ミニッツリピーター」「スプリットセコンド・クロノグラフ」「フライング・トゥールビヨン」という6つの超複雑時計(6マスターピース)を立て続けに開発して世界を驚愕させました。

さらに1991年、あろうことか「これら6つの超複雑機構を、たった直径42mmの1つのケースにすべて詰め込む」という常軌を逸したグランドコンプリケーション「1735」を発表。機械式時計の限界を力技で突破し、スイス時計界復活の狼煙を上げたのです。

■ トゥールビヨンでは飽き足らない「カルーセル機構」の強引な復活

彼らの複雑機構への探求心は、誰も見向きもしなかった古のメカニズムにまで及びます。重力の影響を相殺する機構といえばトゥールビヨンが有名ですが、ブランパンは独立時計師の重鎮ヴィンセント・カラブレーゼを招聘し、1892年に考案されるも実用性に乏しく忘れ去られていた「カルーセル機構」の復活に挑みました。

カルーセルはトゥールビヨンと異なり、キャリッジの外周がギアになっており、回転速度が遅く部品数もかさむという弱点がありました。しかし彼らは、ムーブメントに「ディファレンシャルギア(差動機構)」を強引に組み込むことで、本来遅いはずのキャリッジを「正確に60秒で1周させる(ワンミニット カルーセル)」ことに成功。他社がトゥールビヨンばかりを作る中、あえて誰も作らない複雑機構を現代のスペックでねじ伏せるという、マニアックすぎる偉業を成し遂げました。

■ 超絶複雑機構を積んでも「絶対に深海300mへ連れて行く」狂気

1953年にフランス海軍の要請で誕生した「フィフティ ファゾムス」は、モダンダイバーズウォッチの元祖です。ブランパンの狂気は、このダイバーズウォッチにも容赦なく注がれます。

驚くべきことに、彼らは「コンプリートカレンダー」や、繊細の極みである「トゥールビヨン」といった衝撃や水に極端に弱い超絶複雑機構を搭載したモデルであっても、いかなる妥協もせず「300m防水」のガチのダイバーズスペックを堅持しているのです。

さらに、水中でボタンを押すと浸水するリスクがあるため「クロノグラフは水中で操作してはいけない」というのが時計界の絶対的な常識ですが、フィフティ ファゾムスのクロノグラフは「水中でもボタン操作が可能」な特殊構造を持っています。純粋なダイバーズとしての「オーバースペックの暴力」です。

■ 美観のためにケースに穴を開けない「アンダーラグ・コレクター」

複雑時計において、カレンダーなどを操作するためには、通常ケースの横に小さな穴(プッシャー)を開け、専用のピンで押す仕組みが採られます。しかし、ドレスウォッチ「ヴィルレ」コレクションにおいて、ブランパンは「美しい金無垢のケースの横っ腹に、不格好な穴を開けるなど許せない」と考えました。

そこで彼らは、カレンダーを調整するためのプッシャーを「ケースの裏側、ベルトを取り付けるラグの裏の隙間に隠す」という特許技術「アンダーラグ・コレクター」を開発しました。これにより、ケースサイドの完璧な美観を保ちながら、専用工具を使わずに「指先の爪」だけでカレンダーを調整できるという、変態的なまでの審美性と実用性の両立を果たしています。

ブランパンは、単なる「世界最古のお上品なブランド」ではありません。その本質は、クォーツを全否定して機械式の意地を貫き、誰もやらない忘れられた複雑機構を現代に蘇らせ、超複雑時計であっても絶対に300mの深海に沈められるスペックを持たせるという、スイス時計界における「機械式原理主義のマッド・エンジニア集団」なのです。

ヴィルレ

ヴィルレ

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