BREITLING

BREITLING ロゴ

「プロフェッショナルのための計器」というスローガンを掲げ、航空時計の頂点に君臨し続ける「ブライトリング(BREITLING)」。

一般的なネット記事や雑誌では、「武骨で男らしいパイロットウォッチ」「クロノグラフの先駆者」「ナビタイマーに代表される計器然としたカッコよさ」といった、頼もしく実用的な時計としての評価が並びます。しかし、その製造工程やメカニズムの深層を紐解くと、その真の姿は「『プロ用』という言葉を免罪符にして、実用時計の常識を遥かに凌駕するオーバースペックを追求し続けるマッド・エンジニアリングの実験場」であり、「空と計器への偏執的な愛が生み出した、極限のサバイバル・モンスター」であることが浮かび上がってきます。

今回は、タフな航空時計の裏に隠された、ブライトリングの知られざる狂気とオーバースペックへの執念についてご紹介します。

腕時計に「遭難信号発信機」をねじ込む狂気

ブライトリングの「計器」への異常なまでのこだわりは、もはや時間を知るという時計の枠組みすら破壊しています。パイロット専用モデルとして開発された「エマージェンシー」には、あろうことか「121.5MHzの遭難信号発信機(アンテナ)」がケース内部に平然と内蔵されています。万が一の航空機墜落事故などの際に、アンテナを引き出すことで救難信号を発信し、パイロットの命を救うサバイバル・ギアへと変貌するのです。腕時計の中に人命救助用の通信機器を物理的にねじ込むという、スイス時計界でも他に類を見ないクレイジーなアプローチです。

1100度の炎と875トンの拷問。「15回」の異常な鍛造

武骨で屈強なケースの裏側には、金属に対する凄まじい拷問のような製造工程が隠されています。ブライトリングのケースは、削り出しではなく金型を用いた「鍛造」で作られます。驚くべきは、そのプレス工程です。数十トンもの圧力で金属を叩いた後、金属の内部応力(元の形に戻ろうとする力)を取り除いて硬度を上げるために、わざわざ「1100度の高温の炉で熱する」という工程を挟み、叩く・熱するをなんと「15回」も繰り返すのです。最終的に計875トンもの圧力をかけられて鍛え上げられたケースは、異常なまでの強靭さを誇ります。

さらに、チタンの3.3倍、ステンレススチールの5.8倍も軽い「ブライトライト」という独自の特殊複合素材まで開発し、軽さと強靭さの限界を突破し続けています。

クォーツすら逃がさない。「100%クロノメーター」の狂信

彼らの精度への執着は、機械式時計だけにとどまりません。1999年、ブライトリングはスイス時計界を震撼させる「100%クロノメーター化」を宣言しました。これは、製造するすべての時計において、厳格な精度テストであるCOSC(スイス公式クロノメーター検定)を通過させるという狂信的な目標です。

恐ろしいことに、彼らはこの過酷な試験を「クォーツ(電池式)時計」にまで強制しています。一般的なクォーツの約10倍の精度を誇る温度補正機能を備えた「スーパークォーツ」を自社開発し、年差±15秒という異常な高精度を実現。クォーツは高精度で当たり前という常識に満足せず、スイスの公的機関のお墨付きをすべての時計に強要するという、ゲルマン的とも言える生真面目さとプライドの結晶です。

ブランドロゴすら捨てる「腕に巻くアナログコンピューター」

ブライトリングを象徴する「ナビタイマー」は、まさに文字盤のゲシュタルト崩壊とも言える究極の計器です。1952年に誕生したこのモデルは、文字盤とベゼルに「航空用回転計算尺」を搭載。フライトに必要な速度、燃費、距離の掛け算・割り算を物理的な目盛りだけで行わせる、「腕に巻くアナログコンピューター」を完成させました。

そして究極のエゴイズム(あるいは無私)は、その初期モデルの文字盤に現れています。あろうことか、文字盤にはAOPA(国際オーナーパイロット協会)のロゴだけが鎮座し、自社の「BREITLING」というブランドロゴすら表記されていなかったのです。ブランドの自己顕示欲よりも「プロの計器としての純度」を最優先する、異常なまでのストイックさを見せつけています。

ブライトリングは、単なる「武骨でカッコいいパイロットウォッチ」ではありません。その本質は、プロのための計器という大義名分のもと、ケース内に遭難信号発信機を仕込み、1100度の炎と875トンの圧力で金属を鍛え上げ、クォーツ時計にまでクロノメーター認定を強要する、「航空界への偏執的な愛とマッド・エンジニアリングが限界突破して生まれた、究極のオーバー・スペック・ギア」なのです。

ナビタイマー

ナビタイマー

1952年に誕生し、世界で初めて航空用回転計算尺を搭載したパイロットウォッチの金字塔「ナビタイマー」。一般的なネット記事や雑誌では、「プロフェッショナルのための計器」「パイロットウォッチの永遠のクラシック」「アイコニックでメカニカルなデザイ...