GIRARD PERREGAUX

GIRARD PERREGAUX ロゴ

1791年に創業し、幕末の日本に初めてスイス時計を持ち込んだとされる歴史的メゾン「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」。

ネット上の記事では、「八角形ベゼルが美しいラグスポ『ロレアート』」や、「19世紀から続く『スリー・ゴールド・ブリッジ』の伝統美」といった、上品でクラシカルな老舗としての評価が一般的です。

しかし、彼らのメカニズム開発の歴史を深掘りすると、その真の姿は「伝統的な美観を保つためなら、14ミクロンのシリコンを弾かせ、チタンとカーボンをミキサーにかけ、あろうことか超高級時計の中に『カジノ』を建設してしまう、スイス時計界きってのアヴァンギャルドなマッド・エンジニア集団」であることが浮かび上がってきます。

今回は、優雅な歴史の裏に隠された、ジラール・ペルゴの知られざる「狂気のメカニズムと執念」についてご紹介します。

■ ブリッジの「磨き」だけで7日間。魅せるためだけに巨大化した骨格

ジラール・ペルゴの象徴といえば、文字盤に3つの巨大な矢型(アロー型)の橋が架かる「スリー・ゴールド・ブリッジ」です。

通常、ムーブメントを支えるブリッジ(受け板)は裏側に隠すか、目立たないように配置するのが常識ですが、彼らは1860年代の時点で「ブリッジ自体を文字盤の主役として露出させる」という、当時としては異端のデザインを採用しました。

恐ろしいのはその仕上げです。この巨大なゴールド製ブリッジの表面や、スリットの隅々(フィレ)を完璧な鏡面に磨き上げるためだけに、熟練職人が手作業で「丸7日間」もの時間を費やします。時計の骨格をむき出しにして、異常なまでの労力をかけてピカピカに磨き上げるという、メカニズムの露出に対する強烈な執念です。

■ 厚さ「14ミクロン」のシリコンが弾ける変態的定力機構

機械式時計の最大の弱点は、「ゼンマイがほどけるにつれて動力が落ち、精度が狂う」ことです。これを解決するため、彼らは「コンスタント・エスケープメント L.M.」において、時計界の常識を覆すマッド・サイエンスを披露しました。

なんと彼らは、「厚さわずか14ミクロンという極薄のシリコンブレード(板バネ)」をムーブメントの心臓部に組み込んだのです。この極薄ブレードが、ゼンマイからの動力を一旦限界まで蓄積し、限界に達した瞬間に「座屈(バックリング)現象によって一瞬で弾け飛ぶ(開放する)」という動きを繰り返すことで、常に一定のエネルギーを脱進機に供給し続けます。まるで蝶の羽ばたきのような微細なシリコンのしなりを、時計の精度維持のためだけに強引にコントロールする驚異的なメカニズムです。

■ 確率1/125。超複雑時計に「スロットマシン」を建設

彼らの技術的暴走は「遊び心」の領域で頂点に達します。重力の影響を相殺する超複雑機構トゥールビヨン。それを搭載するだけでも数千万クラスの時計になりますが、「ジャックポット トゥールビヨン」では、あろうことか文字盤の12時位置に「本物のカジノと同じように回転する3つのスロットドラム」を組み込んでしまいました。

ケース横のレバーを引くと、ドラムが勢いよく回転し、美しいチャイム音とともに左から順に停止します。しかも、ベルのマークが3つ揃う「ジャックポット」が出る確率は「125分の1」に設定されています。時刻を知る道具の中に、本物さながらの確率計算を伴うギャンブルマシンを機械式で構築するという、コンプリケーションの極限の無駄遣いです。

■ チタン粉末とカーボンを混ぜ合わせる錬金術「8Tech」

彼らの狂気はマテリアル(素材)開発にも及んでいます。人気ラグジュアリースポーツ「ロレアート」の最先端モデル(アブソルート クロノグラフ 8Tech)において、彼らは単なるカーボンケースを使うことを良しとしませんでした。なんと、「カーボン繊維と『チタン粉末』をレジン(樹脂)で融合させ、それを向きを変えながら幾重にも重ね合わせて固める」という独自のコンポジット素材「8Tech」を開発してしまったのです。

カーボンの圧倒的な軽さに、メタリックなチタンが織りなす不規則なマーブル模様を与え、ロレアートの象徴である「八角形と円を重ねたベゼル」を強引に成形するという、最先端の錬金術を見せつけています。

ジラール・ペルゴは、単なる「日本に初めて来た真面目な老舗ブランド」ではありません。その本質は、スリー・ゴールド・ブリッジで魅せることを160年以上前から極め、極薄のシリコンブレードを弾かせて精度を保ち、超絶機構の横でスロットを回し、チタンとカーボンを融合させてしまう、「伝統と革新を極端な形でミックスさせる、スイス時計界の生きたマッド・ラボラトリー」なのです。

トラベラー

トラベラー

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ロレアート

ロレアート

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